第15日 第89回夏の甲子園コラム

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大会第15日 8月22日(水)の試合結果
―決勝―
佐賀北5-4広陵
☆今日の本塁打・・・佐賀北・副島(大会第24号)

☆今日の甲子園!☆
今日は決勝戦。5万人の大観衆が見つめ、後押しする中、接戦の多い今大会を象徴するような大熱戦が行われた。
高校野球、甲子園の代名詞となるような試合に終盤には大観衆が試合に参加するかのような拍手・喝采で選手を盛り上げ、沸きに沸きかえった決勝戦となった。

【戦評】
 決勝戦はお互い初優勝を目指す対戦。佐賀北は2回目の出場で今大会に甲子園初勝利を挙げ決勝に勝ち進んだ。広陵は春の優勝は3回も夏は初優勝を狙った。
 佐賀北が8回にそれまでの4点差の劣勢を一気にひっくり返した。0-4で迎えた8回、2連打と四球で満塁とし、2番井出が押出し四球を選び1点を返し、続く副島が逆転満塁本塁打を放ち、劇的な初優勝を飾った。
 試合は7回まで広陵エース・野村に1安打に抑えられる苦しい展開だったが、2回途中からロングリリーフとなったエース・久保が踏ん張り、8回の逆転につなげた。久保は7回に失点し、連続無失点回は34回1/3となったが、再三走者を背負いながらも要所を締める粘り強さは決勝でも発揮した。
 広陵は2回に佐賀北先発・馬場を攻め、4安打を集め2点を先制。7回にも投手・野村の2塁打で2点を追加。エース・野村も被安打5の12奪三振と内容では勝っていただけに、切れと制球を欠いた8回の1イニングが悔やまれる。

☆☆☆ 佐賀北 優勝への軌跡 ☆☆☆
1回戦:2-0福井商、2回戦:4-4宇治山田商延長15回引き分け)、再試合:9-1宇治山田商、3回戦:5-2前橋商、準々決勝:4-3帝京(延長13回)、準決勝:3-0長崎日大、決勝:5-4広陵

 
☆今日のKAIスポ・コラムは?!☆
劇的な逆転満塁本塁打での優勝劇。最高潮に盛り上がった決勝・ドキュメント!!


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~ 89回目の夏、球運、クライマックス ~ ( 決勝戦・ドキュメント ) 

 7回を終わって0対4。広陵エース・野村の前に、1安打に10三振。4回から7回まで一人の走者も出せない。三者凡退が5イニング。6回から7回にかけては4者連続三振。佐賀北は最悪の流れで奇跡の8回裏を迎えた。一方で広陵は優勝が見えてきた中で魔の8回裏を迎えた。とにかく、8回裏の入口はそういうことだった。

 この回、7番江頭が三振。1死から、8番久保が打席に入る。今大会、久保は無安打と打撃では全く精彩を欠いていた。しかし、三遊間をしぶとく破り、ガッツポーズで1塁へ走る。今大会の佐賀北の注目ぶりで観衆も久保の初安打に拍手が起こる。何かが、変わりゆく予兆だった。
 続いて、9番馬場崎の代打、新川がライト前で続く。新川はバット引きの役割を果たす地味な功労者だ。

 毎年、決勝戦は独特のムードの中行われるが、佐賀北の快音が聴かれない展開の中、久保、新川の連打は、甲子園のボルテージを上げるには十分だった。
 バックネット裏の3塁側から内野席、アルプスを越え、遠くレフトスタンドまでが佐賀北大応援団と化す。アルプスのマーチに合わせた特大の手拍子が雪崩れのように、広陵エース・野村に覆いかぶさる。

 7回までとは違う甲子園。

 小気味のいいテンポが持ち味の野村のリズムを大応援団の大音量がかき消していく。それまで、捕手からの返球を受けて5秒程度で投球していた野村。自分のリズムよりももっと早く刻まれるスタンドの手拍子が投球のリズムを狂わせていく。リセットするために深呼吸しても途切れることのない手拍子は何度もそのリズムを狂わせる。

 1番辻は四球で満塁となり、井出には押出し四球。

 制球のいいエースには似つかない光景の中、今日、2三振の佐賀北のキーマン・副島が右打席に入った。
 
 
 初球、スローカーブをファウル。2球目は見せ球のインハイ直球。そして3球目。


 捕手・小林のミットに収まるはずのスライダーは副島の一振りでレフトスタンドへと行く先を変えた。


 広陵バッテリーは、過去の打席でスライダーにタイミングがあっていない副島に安全策を選択した。しかし、副島視点でみれば、過去のスライダーの凡退で何球もスライダーの軌道を見て、振ってきているということなのだろう。
 しかし副島を含め、一気に4人がホームを駆け抜ける事態を誰が予想できたか。
 5万人が驚愕した1球で、1振りで、1イニングでの逆転劇。今度は3塁側だけでなく、360度のすり鉢スタンドが放つスタンディングオベーション。ある観客の女性がつぶやく。「この試合は最高の宝物。(この雰囲気は)昨年の早稲田実業を超えている」。



 甲子園、89回目の夏。今大会も球児達の勝ちたい気持ちが本気だからこそ魔物は現われ続けた。

 

【優勝校・佐賀県佐賀北高校
1963年創立。野球部も創立と同時に創部。同じ県立の神埼高校を2001年春夏甲子園に導いた百崎敏克監督も同校出身。夏の甲子園は7年ぶり2回目。春は出場なし。前回初出場時は初戦で横浜高校に1対12で敗退。しかし今大会は勝てるチームで甲子園に登場。開幕試合で福井商を完封。宇治山田商を再試合で破り、強豪・帝京をサヨナラ勝ち。そして決勝は逆転満塁弾と旋風を巻き起こした。また一方で163㎝の左腕・馬場と制球のいいエース・久保の好投が光った。佐賀県勢としては76回大会の佐賀商以来13年ぶり2回目の快挙。全国の公立校に夢を与える見事な優勝劇だった。

- 89回目の夏も 最高の宝物  KAIスポ!!-