編集後記‐大会を終えて‐

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~ 銀傘の陰から ~
 
 第80回記念選抜高等学校野球大会が、昨日、無事に閉幕しました。
 今大会は、昨年の中田(日本ハム)選手のように突出した選手がいない大会ではありましたが、好守によくまとまった36校がすばらしい熱戦を演じてくれました。どうしても観る側からすると、高校野球にヒーローを求めがちですが、ロースコアの接戦が多かったように投手力・守備力等のチームとしてのまとまりを考えると、全員がヒーローといえる、むしろレベルの高い大会であったと思います。
 近年、レベルの地域差がなくなってきておりますが、様々な指導法、後進地域の躍進等で選手個々人レベルでも技術差がなくなってきていることも要因ではないでしょうか。

 そんな中、優勝投手となった沖縄尚学東浜巨投手は本紙プロ野球班からも高い評価がありました。その評価を掲載します。

沖縄尚学東浜巨(投手・181cm、69kg】 
今日は、捕手の後ろの前から2席目という近い距離で東浜を視察したが、すばらしい投手だ。線は細いが手足が長く、リーチをいっぱいに活かした腕のしなり、長身からリリースに進むにしたがって重心が無駄なく下がり、リリースポイントがかなり前にくる点ですばらしい。打者は東浜がかなり近くから投げている感覚に陥るはずだ。ストレートの球の回転とスライダーの切れ、高校生では珍しいツーシームが低めに決まればなかなか打ち崩すのは容易ではない。プロ野球では言うならば、河原純一(巨人→西武)に似たタイプだろう。
 注文をつけるなら、カーブのリリースが指先だけで投げている感じ。もう少し、腕全体で抜く感覚を覚えれば幅が出てくる。
 しかし完成度は高く、東浜は、現時点では、高校生ナンバーワンと言えるだろう。



 さて今大会は、選抜80回の記念大会であると同時に、大正14年に完成した甲子園球場が一部リニューアルされた新装球場での初めての大会ということで例年にも増して注目度の高い大会となりました。決勝戦も平日ながら35,000人が詰めかけ、大会通じて50万2千人が熱戦を見つめました。1試合だけの順延もありで14日間と日数が延びた影響もありますが、第76回(2004年)大会の50万4千人以来の50万人突破となりました。

 本コラム1でも紹介しましたが、開会式前に、大会歌「今ありて」を作曲した歌手の谷村新司さんがマウンドで斉唱しました。この歌は、作詞家の故・阿久悠さんが作詞しました。谷村新司さんは、この歌を阿久さんと一緒に作った当時の思い出話を披露してくれました。
 阿久さんがこだわったのは、「ああ 甲子園」という詞だったそうです。谷村さんは、「甲子園というのは、いろいろな人が想いをよせる場所。その想いをこめられるようにしたい」という阿久さんの強い希望が「ああ 甲子園」という詞にこめられたんだそうです。
 大会を通じて5回終了時のグランド整備中に球場に曲が流れました。甲子園、高校野球の意義にマッチする後世に残るすばらしい曲を残して頂いたと思います。

 本コラム2で紹介したオールドファンとの話をもう少し紹介します。彼は「プロ野球には興味ないの?」と私に訊きましたが、私はこう応えました。「好きやけど、高校野球が一番好き。プロ野球は140試合分の1やけど、自分も経験あるけど、高校野球は、この1試合が全てやから。ほんまに重みが違うんです」と。「そうやなぁ」と彼もうなずきました。
 決勝戦後、9年前の沖縄尚学の優勝時と同じようにスタンドでは自然にウェーブが沸き起こりました。それが180度、何回転も続きました。決勝戦は大差がつきましたが、私は彼が言った「負けても、ミスしても称えてくれるのは甲子園だけや」という言葉を思い出しました。日本の野球の歴史は高校野球にあるといえます。その永い高校野球の歴史は、このように野球を愛する人々により育まれているのでしょう。

 さあ、春の甲子園は終わりました。出場した選手達は、その瞬間から、地域の数多くのライバルと夏に向けての競争がスタートしています。3年生に残された時間は、あと4ヶ月。全国の4000校以上の球児達は、これから夏の甲子園に向けた、尊い瞬間を送ることになります。この夏、時に非情で、時に優しい野球の神様はどんな試練と喜びを球児達に用意しているのでしょうか。本紙からの野球の神様への希望は、変わることなく、球児達に故障なく、最後の夏を迎えてほしいことです。

 最後に今選抜も、KAIスポ・春のセンバツコラムを“ご購読”頂いた皆様に心より感謝申し上げます。季節の変わり目で不安定な気候となっておりますが、皆様どうぞお体ご自愛頂き、ますますご発展されますことをお祈り申し上げます。また夏の甲子園でお会いしましょう。



 -2008年4月5日 KAIスポーツ新聞社・春のセンバツ取材班-
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